18世紀のチェンバロを甦らせる

 浜松市楽器博物館で、18世紀、マリー・アントワネットが嫁いだ頃のフランスで作られたという古いチェンバロが修復され、演奏会が開かれた模様を紹介。中野振一郎さんの演奏場面とコメントもあった*1

 わずかな時間だったが、先日読んだ小川洋子『やさしい訴え』に描かれていたような、チェンバロのいろんな部分がアップ映像で見られた。鍵盤の動きを調整するために木材をわずか1mmほど鑿で削るという細かな作業。張られた弦の下に見える響板の一箇所に開けられた、バラ窓(ローズ)と呼ばれる丸い部分と、刻まれた制作者の名前、嵌めこまれた透かし彫り - 小説の中では、新田氏の楽器のために薫さんがこの部分を作るのだった - 。弦をはじく部品を作るために軸部分が必要となるカラスの羽も、箱にいっぱい入れてあった。ヨーロッパから取り寄せたものだそう。文字で読んだだけだったチェンバロ製作の様子が、少しだけど目に見える形で分かりやすくなった気がする。

 小説に出てくる新田氏のようなワケアリふう男性ではなく(笑)、あくまでも堅実な感じの技術者さんが映っていた(そう、肩書きはチェンバロ作家でも職人でもなく、「チェンバロ技術者」となっていました)。ひと通りの修復が完了した今でも、楽器は常に少しずつ調整が必要だという。

*1:浜松市楽器博物館HPに掲載された、中野さんによるレクチャーコンサート案内のページ→リンク