そんなにうまくいくものか

法月綸太郎『生首に聞いてみろ』(角川書店)読了。

 長らく貸し出されっぱなしだったが、やっと図書館の棚にあったので借りてみたもの。
 舞台設定が1999年の東京、起きる事件の異常さを除けば、ほとんどの場面がごく普通の人間のごく日常的な会話や行動で占められていて、わりと淡々と現実的な調子で展開していく*1小説だけに、人物のすりかわり(なりすまし)というちょっと時代がかった感じのトリックだけが浮いた印象を受けてスカッとしない。××××の痕跡の有無で女性が△△△かどうかを判断、というのもかなり苦しいのではないかと思った。80年代半ば当時であってもお医者さんによって方針はいろいろだったのでは?
 事件が明るみに出て警察が捜査を開始してからのようすが意外と面白かった(実際の警察の動きがあんなのかどうかは知りませんが、けっこう本当らしく感じられる)。と思ったら、法月警視(主人公の父)のファンはけっこう多いみたい。やっぱりね。
 落ち着いた文章なので安心して読めます。が、魅力的かというと・・・私はもっと絢爛奇矯なむかしの探偵小説みたいなののほうが好きなんだな。

*1:都内の地名・路線名が細かく出てくるので、そちら方面の人には更に現実的に感じられるかも。