意外にSF

 アイリーン・ガン『遺す言葉、その他の短篇』(早川書房) 読了。 図書館で借りました。


 表紙イラストだけみると、よくある《本をめぐるファンタジー》ってやつですか?と思ってしまうのだが、作者はけっこう古参&有名SF業界人らしい。それにしても、「謝辞」に始まってウィリアム・ギブスンによる讃辞、著者まえがき、マイクル・スワンウィックによる応援歌(?)とならび、本文のあとにはまたまたハワード・ウォルドロップによるあとがき、これまた著者とお友達だという巽&小谷コンビによる対談形式の解説。これだけ内輪ノリの付録がつくと、SFと無縁な読者である私なんかは「はァ(゚Д゚)?・・」という気分になってしまう。


 それはともかく、収録作12篇のうち私が特に気に入ったのは、太陽系外のさる惑星へ探査に訪れた人間の男と、砂漠に眠る廃墟都市へ死ぬために戻ってきた鳥状エイリアン(?)との静かな交流を描いた「コンタクト」。挿絵の効果もあって、なんとなく昨年読んだ、アーシュラ・K・ル=グウィン『なつかしく謎めいて』を思い出した。
 それと最後に収録されている、アンディ・ダンカン、パット・マーフィー、M.スワンウィックとの共作「緑の炎」は、アシモフハインラインがあのフィラデルフィア・エクスペリメントに参加していた!という設定の活劇。何も知識のない私でも楽しめたが、両作家のそれ以後の作品を知っている人だと「なるほど、この経験が(^^;)のちのちあの作品に・・」などと思い当たるようになっていてさらに面白いのかもしれない。

 表紙イラストで期待した表題作は、ちょっとアテはずれでした。アヴラム・デイヴィッドスンがモデルということなので、詳しい人には別の感興があるのだろうけど。表紙と「作家だった父の遺品が云々」という紹介文につられて、一般的な興味だけで読んだ私には、少し敷居が高い感じも残る短篇集だった。