La bella luna!


月の輝く夜にノーマン・ジュイソン監督(NHK-BS/字幕版)


 一度みたことのある本作、今回の放映はとちゅうからチラチラ観ただけですが、むりやり丸くおさまるエンディングのなかなかハッピーな映画。
 未亡人生活の長かったヒロインが、「今さら恋愛結婚でもないわ・・」というわけでナットク婚を決めたとたんに、婚約者の弟と恋に落ちてしまう話。20年前のニコラス・ケイジはまだ薄毛ではなく顔もほっそり。彼とわりない仲(笑)になったとたんに、化粧っ気もなかったヒロイン(シェール)が見違えるほど色っぽい女性に変身するところが笑える。彼女に裏切られる気の毒な婚約者役が、おばさん顔のダニー・アイエロなのも絶妙。彼らをとりまく家族、周辺の人物もそれぞれ(月並みな言い方ですが)味があって憎めない。


 ところで、この映画に出てくるちょっと変わり者のイタリア移民のおじいさん。月夜に犬をいっぱい連れて散歩、嬉しそうにイタリア語で月を賛美する場面を観ていたら、どこかで見覚えのある顔・・・Feodor Chaliapin Jr.といって、『薔薇の名前』であの厳めしい盲目のホルヘを演じていた俳優でした(180°違うキャラクターなので、なんだか不思議な感じ)。
 著名なオペラ歌手を父としてロシアに生まれ、パリ、ハリウッドを経て戦後イタリアで活動。80年代に再びハリウッドへ戻った頃の出演作が本作だったようです。最後はイタリアで亡くなったという彼の激動の人生と、映画のなかの人物は、方向は違えどもどこか重なり合うものだと言えそうです。