書き込まれ丸められ容れ物に隠された話たち

 ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』(角川文庫) (再)読了。

壜の中の手記
ジェラルド・カーシュ〔著〕 / 西崎 憲訳 / 駒月 雅子訳 / 吉村 満美子訳 / 若島 正訳
角川書店 (2006.11)


 描かれた世界は悪意でいっぱいでも、書いてる本人はたぶん善い人みたいな感じで、残酷な話ばかりなのになぜか救われ感が湧いてくるふしぎな本。「ブライトンの怪物」や「死こそわが同志」が描き出す終末の予感や、「ねじくれた骨」の幻想的なまでに荒涼とした刑務所の描写、兵馬俑を連想させる「凍れる美女」などが印象的。表題作に登場する謎の人物は、私の脳内キャストではビン・ラディン顔だった。