命が大切にされない社会

子どもの事故予防工学カウンシル(CIPEC) - プールの排水口事故予防コンテンツ

プールの排水口による吸い込み・吸いつき事故が、40年前から繰り返し起こっています。 プールの排水口事故は、対策法があるにもかかわらず、繰り返される事故の典型です。


 子供のころ、プールに行く時に「排水口に気ぃ付けや〜吸い込まれるで〜」とは言われたけれど、それは半ば冗談として・であって、本当に吸い込まれるとは思ってなかった気がする。今で言う“都市伝説”みたいな感じで受け取っていたのだろう。
 昨年ふじみ野市で起きた恐ろしい事故が報じられる中で、同種の事故により多くの子供が命を落とし続けてきたという事実を知って衝撃をうけた。

 ほかにも、こんにゃくゼリーを喉に詰まらせたり人工砂浜に生き埋めになったり自動回転ドアに挟まれたりエレベーターに挟まれたりジェットコースターで叩きつけられたり温泉の天然ガスに吹き飛ばされたりして、子供や若い人の命が奪われる事故が近年いくつもあった。どれも、無責任で想像力を欠いた大人のせいで起きた人災だ。


 このような事故が起きるたびに、行政の対応や法律の不備が指摘される。そういう外側からの規制や監視が必要なのは当然であるが、それはそれとして。それ以前に、どんな仕事においても「これはこうしたほうが良いのでは」「このままにしておくと危ないかも」「もしこういうことが起きた場合を考えると」などなど、誰に言われるでなくてもそれぞれがいろんな場合を想定して工夫し知恵をしぼることで、社会は進歩してきたはずだ。特に日本がこの百数十年の間に遂げた発展は、そういう細やかな心配りや思いやり、想像力と工夫を物づくりや商売に活かしてきたおかげと私は思っている。その力が、急速に失われたように見える。


 「貧すれば鈍する」と言われるように、長い不況が人の精神を麻痺させてしまったのかもしれない。でも、どちらが原因で結果なのか?・・他人の身になって考えてみる。使う人の立場を想像してみる。そういう当たり前だったはずのことができなくなった結果が、経済的停滞なのだとも考えられる。
 点検は業者に任せているから。法律で定められた基準は満たしているから。届け出書類はととのえたから。etc.そんな言い訳で自分の責任を果たしたような気になっている者に、社会保険庁をあれこれ非難する資格は無い。
 みんなが小役人みたいな保身と言い逃れに走るようになったこの国がイヤだ。「少子化少子化」「産め産め」とうるさいくせに、いざ産まれた子供を全力で守る気などないこの国がイヤだ。子供が自殺した時は「命を大切に」などと偉そうに(しかも紋切り型でサ)説教するくせに、子供の命が無惨に奪われることをちっとも重大視せず、危険な状態を漫然と放置し、同じ過ちを平然と繰り返し、自分さえ法的に/書類上セーフだったらそれでいい、そんな大人が子供を食い物にし続けるこの“美しい国”がほんとにイヤ。


 子供が危険にさらされていることを知った人は、あらゆる場所で何度でも、千倍万倍大声で触れ回って欲しいと思う。今回配信が開始された【プール事故予防コンテンツ】は、そんな貴重な警鐘のひとつであると私には思えた。