向かい合う作品

[ダイアローグ]コレクション活用術 vol.2/伊庭靖子、児玉靖枝、佐川晃司、渡辺信明
平成19年(2007) 6月16日(土)〜7月29日(日) 滋賀県立近代美術館


 館蔵品と現代作家の作品とを一緒に展示することで新たな視点から作品を観ようという試み。主催・企画者側が取り合わせを考えるのかと思っていたら、各作家が自由に館蔵品を選び、並べ方見せ方も決めたのだという。まさに作家による企画展が4部屋それぞれにわたって開かれているような眺めだった。


 以前から伊庭靖子さんの作品に興味があり、今回は作家本人(伊庭さんと渡辺信明さん)のトークイベントもあるというので会場に足を運んだ(7/8(日))。
 伊庭さんの作品を初めて観たのは、1997年に京都市美術館で開かれた『想い出のあした』展。やなぎみわさんの作品を観たくて出かけた展覧会だったが、伊庭さんや戸矢崎満雄さんの作品を知ることができた。この時も、京都市美術館の古い建物と数人の現代作家の作品が響き合うという趣向の展示で、どうも私にとって伊庭さんの作品は、いつも何かとの「対比」のなかで出会うよう運命づけられているみたい(笑)。ご本人は「いつも個展中心に考えているので」と今日のトークでおっしゃっていたけど・・その後2001年のイムラアートギャラリーでの個展を観て以来なので、6年ぶりということになる。


 対象をいったん写真撮影し、ペインティングで再現するという手法は変わらず。以前にみた作品では、タオル地やワッフル地など布の表面、あるいは果物の断面の超クローズアップなど、材質感を極端に取り出してみせたという印象が残っているが、今回の作品には光や奥行き・距離など、対象をとりまく空間をより感じた。
 私はこれまで、伊庭さんの作品のハイパーリアルな描写には視覚的実験あるいは挑発の意味が大きい(たとえば、人間の眼にとって「写真に撮って、それを見て描く」ことと「実物を見て描く」ことに果たして違いはあるのかという問いであるとか)と受け取っていたのだが、きょう聞いた本人の話に何度も「質(しつ)」*1という言葉が出てきたことから、伊庭さんの関心はあくまでも対象の「質」というものをいかに捉え再現してみるかという点にあるのだろう、と考え直した。

→→伊庭靖子さん公式HPはこちら


 トークイベントは老若男女さまざまな人で満席になって、学芸員さんも驚いていた。7/22(日)には、児玉靖枝さんと佐川晃司さんのトークがあるそうです。
 ちなみに画像は展覧会チラシと伊庭靖子ポストカード。伊庭さんが対象を写真に撮って油絵を描き、それをカメラマンがまた写真に撮って印刷されたポストカードを、さらに私が写真に撮ったものです(笑)。

*1:さいきんよく言われる「質感」ではなく、あくまでも「質」ということばだったのが印象に残った。テクスチャーではなくてマテリアルということか。