馥郁かつ殺伐

 佐藤亜紀ミノタウロス』(講談社) 読了。

ミノタウロス

ミノタウロス

 この人の小説を読むと、しばし"男の子"気分になれるところがひょっとして好きなのだろうか、と今さら気づく。でもそんな暢気なこと言ってられるのもせいぜい小説の前半だけ。
 もともと父は不在あるいは機能不全でありながら、似非父は殺さねばならず、しかもその似非父が失われたあとに更なる転落がやって来る。結末近く、ウルリヒ(と、ぼく)のお育ちの良さが覗く場面は、表紙画の夕映えのように切ない。