てのひらに載せる小さな箱

エリック・マコーマック『隠し部屋を査察して』読了。

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)

 これはキタ。他の人から見たら何の共通点もないかもしれないが、私はスタージョンを思いだした。というより、スタージョンを好む幾人かのひとがスタージョンについて書いているあれこれを読んで「そうかなぁ」といまひとつピンとこなかった事どもを、この本を読んだ今になって何となく身に沁みるような感じで思い出すのだった。きっとこれが、やっと見つけた私の歪みかただったのだろう。また何度か帰って行きたい世界だ。
 架空の書き物の形を借りた「断片」「一本脚の男たち」「ともあれこの世の片隅で」や、合わせ鏡をのぞきこむような「窓辺のエックハート」「双子」「フーガ」、奇妙な土地にまつわる「隠し部屋を査察して」「町の長い一日」、どれも懐かしい。ひとり旅先のベッドで読んだ「祭り」はなおのこと首筋をヒンヤリとさせてくれた。