どこまで覚めても悪夢

 これの元作品である『影なき狙撃者』(原題は同じ)は、ずいぶん前に諜報戦か何かを扱ったドキュメンタリー番組で映像が一部引用されていたのを観て知った。もちろんほんの一場面だったけど、洗脳された兵士が予め定められた合図をきっかけに、無表情のまま操られて殺人を犯す場面の怖さは、旧作のモノクロ画面(と、たぶんアンジェラ・ランズベリーの怖い顔)でいっそう際だっていたような気がする。
 リメイクされたのはそれより後だったはずで、どちらもいつか観てみたいと思っていた。しかもリメイク版のほうは、あの“マネキン顔”なリーヴ・シュライバーが操られ役なんだもの。『クローン』のゲイリー・シニーズもそうですが、つくりものっぽい顔の俳優が意思無き存在を不気味に演じるのが、私は好きみたい。
 ところで本作、テーマが毒々しい割にはあまりあざとい絵づくりなどがなくて、全体に地味(そこが監督の大人っぽさなのかもしれませんが)。演技派(たぶん)揃いの渋豪華キャストで真実味の濃い手触りなだけに、結末(に至るまでの、あの"顔見知りの女性"が果たす役割も含めて)の納得いかなさがひっかかる。ほんとかどうか分からない計画を阻止するために、FBIが予めそこまで熱心に動くのかとか、最後の映像操作の場面でミゲル・フェラーが同席、あらら軍はいったいどの時点から関与?とか…すっきりしない部分を残してそそくさと早じまいの印象。どちらにせよ世界は操作され改竄されつづけるのだけど、それにしても当初の陰謀の壮大さに比べて終わりかたが弱い。それと、体にチップを埋め込むというような大がかりなことをしたにも関わらず、結果的にみんな悪夢に悩む=洗脳しきれてなくて失敗、ということは、旧作どおり催眠術だけで操ったほうがマシだった!?

 あとで読む:『影なき狙撃者』の紹介