つかまえどころがない

グラディス・ミッチェル『タナスグ湖の怪物』(論創社) 読了。

タナスグ湖の怪物 (論創海外ミステリ)

タナスグ湖の怪物 (論創海外ミステリ)

 積み本が減らないので長らく自主的に図書館禁止だったが、外出先で時間をつぶす必要が生じて久しぶりに図書館本。

 ミセス・ブラッドレー(=偉い人なので称号付きでデイム・ベアトリス)という女性探偵のシリーズもので、この女性がミス・マープルとはまた違ってえらく強烈な個性の持ち主らしい…とどこかで予備知識を仕入れていたのだけど、本作に限っていえば(シリーズのなかでもかなり後期の作?だからか)あらためてデイム・ベアトリスの容姿や性格を印象付けるような描写もほとんど無くきわめて淡々と進行していくので、そんなに濃い女性という感じは受けなかった*1

 それよりも、例によって英国有閑階級の男女、知り合いの親戚やら親戚の知り合いやらが連なって十余人も、タナスグ湖に棲むとうわさされる(要するにネッシーみたいな)怪物の実在を確かめんとて、キャンピングカーを連ねて連日泊まり込みで観察を続けるという道楽からして、バランスの狂った奇矯な設定なので、むしろデイム・ベアトリスには冷静な常識人らしさが割り当てられているようである。同様に、彼女を補佐する有能な秘書ローラという女性も登場する。TVシリーズ『名探偵ポアロ』のミス・レモンをイメージしつつ読み始めたのだが、どういうわけか途中から頭の中で「スーツを着こなしてテキパキ働くエドはるみ」に変形していってしまい、読んでいて可笑しくて困った(実際にはローラはもっと若い設定だと思うけど)。ローラの判断と行動の素早さ的確さは読んでいて心地よいほどである。やはりジーヴス/バンター系の人物が活躍する話は面白い。怪物?さぁ、いたのやらいなかったのやら…

*1:本作は含まれていないが「ブラッドリー夫人」としてTVシリーズにもなっているらしく、このヴィジュアルはびっくりだけどなかなか格好いい。↓番組ガイド:「ブラッドリー夫人」: 【海外ドラマ番組ガイド☆テレプレイ】