改変されていっそうブリティッシュ

イアン・R・マクラウド『夏の涯ての島』(早川書房/プラチナ・ファンタジイ)読了。

夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ)

夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ)

 図書館本。返却期限が来た(&根気が消失)ので、最後の「息吹き苔」のみ未読。同じ物語世界に属するという「転落のイザベル」は読んだので、まぁいいかと思いました。「息吹き苔」はちょっと長めなので、また仕切り直しということで。
 やっぱりいちばん面白く読みごたえがあったのは表題作かな。原題"The Summer Isles"が「夏の涯ての島」とは何とも美しくそそられる和訳ではあるものの、なぜ?と最初は思い、読み終わるころにはそれがしみじみ納得されるという仕掛け*1。余談ですが、ジョン・アーサーという名前は私に、なぜか脳内キャストとしてドクター・フーの人の起用を促しました。黒髪のファシスト
 それと「チョップ・ガール」、あらすじを読んだ時点では全く期待していなかったのになぜか引きこまれてしまった(とくに不死身の男が語る、自分だけ生き残ってしまった体験のくだりなど)。他のもついていきやすい感じの作品でした。作者は季節(とくに夏〜秋の移り変わり)にこだわりがあるみたいだと解説にありましたが、よく出てくるのが「匂い」。風や植物の匂いや感触が巧みに描かれているおかげで、話の中に入りこみやすかったのかも。SF感はあまり無くて、ファンタジーの印象が強い一冊。

*1:英国人にとってもこのSummer Islesという名前は、夢と幻滅を縒り合わせたような響きを持つのではないだろうか