とにかく一気読み

セバスチャン・フィツェック『治療島』『前世療法』読了。(どちらも図書館本)

治療島

治療島

前世療法

前世療法

 『前世療法』のほうも、裏表紙の紹介文には「サイコスリラー」と謳ってあるものの、その名に値するのは『治療島』のほうだけではないかなぁ。最初から“信頼できない語り手”と思いながらも、つい主人公の荒唐無稽な告白に気持ちを始終ぶれさせつつ引き回されてしまい、芯から疲れた『治療島』。それに対して『前世療法』は、『ダ・ヴィンチ・コード』みたいな巻き込まれ右往左往タイプのアクション・サスペンス物という感じ(と言ってしまうこと自体がネタバレだからなのか)。
 全編がほぼ主人公の視点で、主人公が語り又は主人公が聞かされた話を聞かされるという、わりあい一直線なつくりの『治療島』に比べて、『前世療法』は場面転換もアクションも盛りだくさんで、ひじょうにハリウッド映画っぽい感じに楽しめる。とはいえ、“わるもの”が誰だったのか判明した時には、私にはどんでん返しが極端すぎて、スコーンとした快感よりむしろ「はァ?」という不快感(ムッとしたと言いましょうか)のほうが強くなってしまいました。
 両作とも、登場人物が風邪気味や偏頭痛や病気や服薬やで、常に苦しかったり朦朧としていたりすることで、読み手のほうまでイライラ・焦燥感を抱えつつ読まされる事になるというサスペンス感創出の手法は、ちょっとアンフェアな気も。ともあれ、どちらも読み出すと先が気になってなかなか止まらないお話ではありました。