痛々しくないサービス精神


 精細なのにしつこくない筆致で描かれた可笑しくも静かな世界。もちろん実物をみるのは初めてで、その美しさにびっくり&うっとり。とても欲しくなってしまった。特に明智光秀ご一行の『最後の晩餐』図、なぜか愛おしい。描線や色の調子はいかにも日本画ふうなのに、じつは油彩も併用して描かれているというのにも、へぇー、だった。
 蓮華王院=レンゲ押印、とかひとつひとつネタを説明してしまう親切な芸風(美術館ニュースレターに連載されていた漫画からも感じていましたが)も好き。特に、電信柱のさまざまな様態を華道に見立てた「柱華道」にはくすぐられる(↑画像は図録より。いかにもどこかの古い伝書みたいなつくり)。ただ、地下展示室コンクリート壁面のひび割れや変色を見立てる作品は、スミマセン、正直いってほとんどわからんかった…暗かったし、私の眼も悪いので。
 会場内のサンルームには、地元の蘭愛好家*1から貸し出された鉢がいくつも展示されていたのだけど、それに並んで槇原敬之氏から山口氏へ贈られた蘭も飾られており、旧い洋館の雰囲気と合わせてなにやらプルースト感(?)が濃厚な空間が出現していた。ような気がした。

*1:この美術館の建物はもともと加賀正太郎氏の所有で、蘭の栽培でも有名な人だったそう