不在ノ羽搏キ

『凶鳥の黒影 中井英夫へ捧げるオマージュ』(河出書房新社)読了。



 津原泰水皆川博子ご両人の作品が好き。中井英夫につきすぎてないところも良い。津原「ピカルディの薔薇」の巧みな構成、しだいにはりつめていく悲痛な色。皆川「影を買う店」は、いっけん全く違う方向から思わぬ足どりで中井の作品世界へズームインの如く近づいて、女流作家M・Mのいた町、中井のいた町、そしてふたりともいなくなったこの世界を重ね合わせて見せてくれる。
 エッセイ部門はあまり要らなかったかも(全部とは言わないけど)。