この世を超圧縮

ダン・ローズ『ティモレオン』(中公文庫) 読了。

 (amazonには文庫版の書影がないみたいなので、ひさびさにbk1リンク)

 あ゛ーーっ読んでしまった!イヌ好きには耐えられない結末…だということは読む前から薄々わかってはいたのですが、やっぱりイヤ。しかも『第九軍団のワシ』の家オオカミ「チビ」に癒された直後にこれを読んでしまうとは。これは寓話ですから寓話ですからと必死で自分に言い聞かせつつ読了。


 主人公はミュージカルで一世を風靡した作曲家(安直にアンドリュー・ロイド・ウェバーを思い浮かべつつ読んだ)、他にも音楽関係の小ネタがちょくちょく出てきて、なかでも「デヴィッド・ボウイ債」なるものが言及されていたのには驚いた(まるで小室某みたいやん?)。その作曲家を中心に、一匹の犬がぶーんと打ち上げられた人工衛星のように飛び出し、その軌跡はさまざまな人の運命と交錯しつつ、やがて主人公のほうへ戻ってくるのだけど…
 たったこれだけのヴォリュームに何冊ぶんもの話が詰まっている重さにずっしりと打たれた気分*1。いつか天国に帰った時に、「こういう場所へ行ってたんだって?」と神様(<誰よ)がこの本を手に持ってぷらぷらと振りながら訊かれたら、「はぁ、たしかにそんな所でした」と答えてしまいそうな、しかしその日が来るまでは読んだことを忘れていたいような、そういう話でした。


 この結末を読むと寝付けなくなるだろうと思いつつ、翌日回しにできなくてとうとう読みおえてしまったので、口直しにこっち↓を少し読みかけてやっと就寝。

*1:帯の【本棚に「ティモレオン」を一冊所有することによって、私はたしかに世界を所有している】なる惹句はその意味で当たってる。んだけど、江○香織という名前を見ると読欲減退してしまうのでこの人を惹句や解説に起用するのは止めテケレ。先日も本屋でちょっと買おうかなと思ってる本を手に取ったら、この人が解説ぽいものを書いていてげんなりしてしまった