『アラビアの夜の種族』を、なんとほぼ1ヶ月かかって読了。綿々と翻訳され転写されてきた古書の翻訳という体裁をとった作品なので、もっと擬古体ぽい文章でつづられているのかと期待していたが、全編これ古川節がぎっしり詰まってブンブン唸りを上げている超大作だったのは意外だった。
四が三に、三が二に、二が一になる、多が一になる物語。あれ、逆か。何度も書き写され書き加えられ、異なる手になる部分が縒り合わされ絡み合いながら全体を為している、作中に出てくる怪蛇の姿と同じ物語。空白のあるところ、必ず誰かが書き込まずにはいない(だろう)物語。語りはいつのまにかバラけてズレて、他人の夢に浸食される夢、現実が食い込む書物。あぁ暑苦しい…真夏をすぎてから読み始めてよかった、と胸をなで下ろした。
さぁ、キンモクセイの香りが漂ってきたこの季節ですが(--;)、次はまばゆい光に満ちた“数値海岸”の永遠の夏に照らされてきます〜
- 作者: 飛浩隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: 文庫
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