なまえ雑感

 気になる人名のはなしの続きのような、続いてないような話。


 今週で終わるTVシリーズ『ダメージ2』で、ウィリアム・ハートのやっている役名がDaniel Purcellダニエル・パーセルという。

 『プリズン・ブレイク』の、シーズン1で死刑囚として収監されており、弟マイケル・スコフィールドの助けで脱獄する兄リンカーンバロウズを演じていた俳優の名前が、Dominic Purcellドミニク・パーセルであった。この、DominicおよびPurcellという名前は、(おそらく私にとってだけだろうけれど)ひどく繊細で儚くきらきらした、銀線細工のような美しい響きとイメージを持っている。先述のDaniel Purcellも、Dominicほどではないが、やはりそれに似てたおやかな感触の名前である。
 たぶんDominic/queやDaniel(le)が、女性にも使われる名前だということも影響しているかもしれない。Purcellのほうに関しては、作曲家Henry Purcellのことも少し連想はするけれど、やはりPurcellという音の印象そのものに、透明で清澄でほっそりした感じを受ける。


 しかし、それらの名前を与えられた人物は(役名と俳優名の違いはあるけれど)、いずれも平均以上にズドーンとした、いかつい感じのおっさん達なんです。(左:劇中人物Daniel Purcell、右:俳優Dominic Purcell)
  

 こんなところに違和感を抱いているのは私ぐらいだろうとは思うが、『ダメージ2』を観ていると、劇中でダニエル・パーセルという名前が口にされるたびに、『プリズン・ブレイク』を観ていた時の「あんたがドミニク・パーセル?」という落ち着かなさを思い出し、同じ気分に陥ってしまうのである。よりによって、あんたがダニエル・パーセル?…


 ドラマと人名といえば、『デスパレートな妻たち』で、スーザンが産んだ男の赤ちゃんに、マイクが自分のお祖父ちゃんにちなんでMaynardと名付けようと言い出して、スーザンが猛反対する場面があった。Delfinoという姓に(民族的な意味で)マッチしないという理屈もあったみたいだけど、ウィステリア通りの主婦仲間も皆そろって「ぐぇー」という反応をしたところを見ると、やはりMaynardという名前そのものが何かヘンテコな感じなのだろうかと思われる。nerd(=ヲタク)を連想させるという説もどこかで読んだ。直前にドラマに闖入してくるマイクの母親=スーザンにとってはお姑さんが、南部独特(たぶん)の強烈なママとしてほとんど戯画的に描かれていたので、Maynardもサザンっぽい名前なんだろうか、とも思うけど根拠なし。私には一応(聞き慣れないものの)きれいで上品な名前に聞こえるけど、こういう語感とかイメージってほんとにわからない。


 さらに脱線すると、ロートレアモン伯爵の本名、Isidore Lucien Ducasseというのも、プッと吹き出すくらいおかしな名前だと聞いたような記憶がある。イジドールっていうのが変な名前なんだったかしら。ことの真偽も、どう可笑しいのかも確かめないまま二十年ほど経ってしまった。