犬の嗅ぎ分けによる捜査で誤認逮捕

 テレビのCNNニュースでやっていたので、ウェブで探してみた:


 犬を使った臭いの嗅ぎ分け("dog-scent lineups"=犬が臭いを嗅いで行う「面通し」という感じ?)により、テキサスの保安官が殺人事件の容疑者とされたが、のちにDNA鑑定によってそれが誤りと判明し、別の人物が犯行を認めたという事件の報道。
 apesnotmonkeysさんが取り上げておられた、冤罪を告発する団体「イノセンス・プロジェクト」は、多くの冤罪を生んでいる「犬の嗅ぎ分けによる捜査」を禁止するように州政府に求めているとのこと。


 濡れ衣を着せられた保安官は、被害者の近隣に住み面識もあった。それで捜査陣やハンドラー(犬を扱う係)が、予断でもって犬を彼の家の方へ連れて行ったのではないかと、当の保安官は疑っているらしい。


 よく警察犬の試験などで、臭いを付けたガーゼみたいなものを犬に嗅がせ、一列に並べた幾つかの缶の中から、同じ臭いのものを見つけさせる…という光景を見かける。この事件で問題になった捜査法もそれと同じような方法で、殺人現場での遺留品と、容疑者の衣服や身体を拭ったガーゼとを嗅ぎ比べさせているようだ。でも、「そういう訓練を受けた犬が、そういう反応を示した」ということが判るだけであって、「何がどう一致したのか」が人間の目に見える形で証明されるわけではない。犬による判定をどう扱うかきちんとした基準も定められていないようだ。この場合、疑われた人物と被害者には事前に交流があったわけだから、殺人事件とは無関係に、容疑者の体臭が被害者の周辺の物に付いていた可能性も無くはないだろう。


 鑑識による捜査をテーマにしたテレビドラマ『CSI』なんかでは、銃弾の線状痕や指紋を照合して「一致したわ!!」→全面解決、というシーンがしょっちゅう出てくるけれども、それだって実際にはある程度の誤差や、願望によって見たいように見てしまう危険はあるだろう。「一致している」とはいったいどういうことなのか、というしっかりした定義がなければ、DNA鑑定だって指紋だって、恣意的なものが入りこむことは有り得る。まして犬の嗅ぎ分けだけで、他の物証もなく重罪犯にされてしまうとしたらかなり危うい感じ。それに犬好きといたしましては、人間のために一生懸命ワンコが働かされた挙げ句、それがかえって悪い結果につながるなんて、これほど辛いことはありません(>_<)