死よりも重く

 最終回だというのに、定年退職だというのに、このひたすら暗鬱で皮肉で重苦しいドラマは、最後の最後になってまだテニスン警視にあんな重い十字架を(しかも一つではなく!)負わせるというのか。やれやれ、引退後の彼女が年金を受け取りつつ、こぢんまりした自宅で読書やガーデニングや手芸をのんびり楽しみ悠々自適の日々を過ごすことなど絶対にあり得ないというわけだ…(そりゃ確かに、もともとありそうにないけど)。

 ドラマの最初から、フィリップス一家(特に夫妻のあいだ)に不可解な緊張が漲っているのが見て取れる。後になればわかるように、あの時点で既に破滅が起こってしまっていたのだからそれも当然なのだが、フィリップス校長の「サリーだけが私の希望だった」という台詞からは、ことが起こってしまう前から一家がギクシャクしていた様子が想像される。いったい、あの一家は何者だったのか、という少しぶきみな後味が残る。フィリップス校長役のStephen Tompkinsonは、マイケル・ケインを若くしたような、いかにも英国人ていう感じ(私見(--;))の顔で、よけいに「この標準的な家庭にいったい何が?」という気分が盛り上がるのだった。