悪夢で膨れあがる

平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)読了 。

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

 毎晩寝る前に一篇ずつというペースで、楽しく読了。思ったよりヴァラエティがあって、飽きなかったし、食べながら読もうとさえ思わなければ大丈夫(^◇^;)。あーそれと痛いのは苦手なので、特に痛そうなところは文字でなく行間を読むようにして通過(もったいない)。しかしこの本がなぜ「このミス」1位?ホラーあるいはSFならわかるけれど、ミステリーと呼ぶのは少し無理を感じる。 
 どちらかというと「オペラントの肖像」「卵男(エッグマン)」のようなSFぽい設定のものが好みだが、「すまじき熱帯」のジャングルに埋もれた石造遺跡のイメージや、nadja5さんお気に入りの「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」で、主人公が繰り返し自らを浸しにいく夢の空間とその変容も何だかくっきりと眼に浮かんで非常に面白かった*1
 しかし何と言っても一番可笑しくしかも悪夢っぽかったのは、やはり表題作の、ライバル同士である新旧地図(というか「紙」と「皮」)が歌舞伎かよ!?という感じの台詞回しで応酬するところだろう。全体としてこの作者の文体は読んでいて心地よく、けっこう私好みだと感じた。最新の話題作『ダイナー』は長篇だし、ウェブサイトで途中まで読んで挫折してたんだけど、読み続けたらやっぱりハマるかも知れない。


 ところで、「Ωの晩餐」から連想したのだが、TVシリーズ『名探偵モンク』にベッドに横たわったままの超肥満の謎の人物が出てきたよね*2。あれは収監中の犯罪者で、モンクの妻が殺害された事件について何かを知っているという設定だったけど、その後どうなったんだったかしら。あのイメージを思い浮かべながら読みました。

*1:ただし最後のは余りにも切羽詰まった感じ(他の作品に比べて笑える要素も殆ど無いし)で、ちょっと息苦しかった

*2:追記:Dale "The Whale" Biederbeckというキャラクターでした。ここで彼の台詞が読める。