堂守としての王

  • BS-hi プレミアム8 『城 王たちの物語 4 「フェリペ2世と4人の王妃」』

最盛期のスペイン帝国に君臨したフェリペ2世。この王の「使命感」「苦悩」を、彼が晩年「王家の墓」として心血を注いで建造したエル・エスコリアル宮殿を通して描く。幼少のころから「人を信じてはいけぬ」と帝王学をたたき込まれ、生涯を疑心暗鬼の中で過ごした。4人の妻を持ったが、次々と死別。悲しみと孤独の中で治世を進めていかなくてはならなかった。“慎重王”とも“南の悪魔”とも呼ばれたフェリペ2世の実像に迫る。


 父親の厳しい教育にフェリペ2世本人は何とか耐えたものの、自分の息子を不幸な死に追いやってしまったという、つらい運命。この番組で描かれている限りでは、人柄としてはけっこう質実で善良な人だったみたいなので、よけいにお気の毒である。
 複雑であまり恵まれなかった結婚や家族関係の説明が長いぶん、シリーズタイトルから期待されるほどにはお城の紹介が詳しくなかった点が残念(たとえば庭園があまり映らず)。ただ、壮麗な礼拝堂と、そこに隣接するように(というよりも枕に頭を載せたままお堂が覗きこめる?みたいな配置に)作られたフェリペ2世の質素な寝室とか、一族全ての遺体を結集させた驚くような納骨堂とか、彼が重視し彼の人生を象徴するような箇所はしっかりスポットが当てられていた。


 番組全体が、あるスペイン人の映画監督(名前失念、男性)を主人公として、フェリペ2世をめぐる何人かの人々(父カール5世、歴代の妻たち、娘など)が霊界から?姿を現して主人公にさまざまな証言をする、という仕立てになっている。番組はじめのほうで、監督は「エル・エスコリアル宮殿は映画の撮影にもよく使われ、自分も撮ったことがある」というようなことを言っていた。じっさい、「あっ、この場所、『アラトリステ』に出てきたんでは?」と思うところが3箇所ぐらいあった。IMDbで確認してみたら、やっぱり『アラトリステ』のロケ地リストにエル・エスコリアル宮殿も含まれていた。スペインが一番華々しくて、そしてうっすら翳りはじめる時代を象徴する、豪華でありながらどこか悲しい建物。


 [そうそう、Twitterに先に書いたので忘れてたけど、音楽もなかなか素敵だったんです。しかし、フェリペ2世の時代よりもうちょっと後のもの(バロック音楽ど真ん中)だったんじゃないかなぁと…誰か教えて]