氷雨に濡れつつ幻想を呼吸してきた(3/10(水))

 (ちなみにこの日の神戸の空模様/山模様はusokiさんのこの日記のとおりでした)

 地元出身の画家ということで、常設展というか収蔵品(コレクション)展のそのまた一部という規模で展示されていたものだが、思ったより見ごたえがあった。
 これまでは蔵書票などの小さな銅版画作品を(それも印刷で)見たことがある程度で、チラシに取り上げられているような油彩作品は知らなかった。描かれているモチーフや、女の子の姿態なんかはけっこう好みなんだけど、実際にみてみると油絵の色合いが私にはちょっとギトっと感じられて、やっぱりこの人の作品は繊細な銅版画のほうが素敵だと思った。それも69〜70年頃の、時計?や球体が反復された、シュールレアリスムぽい観念的な雰囲気のある作品が、いかにもその時代という感じがして(新潮文庫倉橋由美子の装丁に使ってあった、野中ユリ作品などを連想)かえって新鮮な面白さを感じた。
 
 主目的はこの「山本六三展」だったが、同じく館蔵品の展示で「幻想版画の系譜」と題して並べられていたマックス・クリンガーの連作『手袋』、エルンスト・フックスの連作『エステル』、マックル・エルンストの『博物誌』などがとても充実していて引きこまれた。
 なかでも一番重量級かつ偏執的に描き込まれているのはフックスの作品だろうと思うが、たぶん幻想絵画と呼ばれるようなものが多少とも好きな人には、ある意味で「おなじみ」感のある世界。テーマも旧約聖書に材を採ったものらしく(私は知識不足だったのですが)、わかる人にはちゃんとわかる作品になっていたんだと思う。
 それに対して、クリンガーの『手袋』は、「これ何!?」と途方に暮れてしまうような奇妙な味わいがあり、不安な構図も手伝って悪夢のように忘れがたいものだった。いちおうストーリーがあるようなのだが(下記リンク参照↓大きな画像も見られます)、展示にはほとんど説明がついてなかったので余計に気味悪さが増してしまったような(笑)。



***クリンガーの連作『手袋』の詳しい解説:海外美術散歩06-2
***フックスの詳しい紹介:エルンスト・フックス
***フックス美術館公式サイト:Official Webpage of Prof. Ernst Fuchs