恩田陸『麦の海に沈む果実』読了。
- 作者: 恩田陸,笠井潔
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/01/16
- メディア: 文庫
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『常野物語』シリーズでもそうなのだけど、私にはこの作者の長篇はいまひとつノリにくいところがあるみたい。前作『三月は深き紅の淵を』は、実際にはひとつの長篇ではあるのかもしれないが、全く異なるお話をたばねて連作に似た形になっているところが、読みやすくもあり、またその「企み」を楽しんでいる気分にもなって、心地よかった。
この『麦の海に沈む果実』のほうは、語り手の素性に関する解決もなんとなくスッキリしなかったし、無理を感じる箇所が少しあって残念。
とはいえ、北の果てに閉ざされた“学園帝国”という設定は魅力的*1だし、少女小説として心躍る要素はいっぱい埋め込まれている。前に、リアルタイムでは巡り会い損ねた佐々木丸美の作品を読んだ時に、もしも自分が10代の頃に読んでいたとしてもハマったかどうかは疑問だなという感想を持ったのだが、仮に恩田陸の作品が私の10代の頃に存在したとしたら、これはたぶん夢中になって読みふけったのではないかという気がする。
ところで、恩田陸の作品にはときどき「男になったり女になったりする人」が出てくるみたいだけど*2、あれは何の意味があるのか、よくわからない。すみません。
*1:宮木あや子の『雨の塔』の舞台設定は本作に影響されたものでしょうか?
*2:『MAZE』がそうだったし、同じ人物が出てくる話が他にもあると聞いた気がする