華麗な伝奇パヴィリオン

半村良石の血脈』(集英社文庫)読了。 

石の血脈 (集英社文庫)

石の血脈 (集英社文庫)


 予想を超えてエロ度高め。とはいってもオマケではなくてむしろ本題のうちなので、それもしかたないですうふふ。
 また、それほど精細にディテールが書き込まれているわけではないけれど、いちおう「空想建築もの」でもあり(主人公は建設会社勤務の設計家)、それがたとえ新宿とか現実の俗っぽい街に位置する店舗であっても、それぞれに面白い。いつ出るかいつ出るかと思ってた“伯爵”の出番がアレだったのはちょっと残念だけど、定番の伝奇アイテムをてんこ盛りにどんどん進んでいく気分のよさは変わらなかった。
 自由と社会、個人と遺伝、進化と格差、などなどに対する思索も織り込まれて、うっとおしくない程度に「人間論」的な大きさを感じさせる小説だったと思います。