じつは見えていた

 たまたまBSで放映していたのだが、私の好きなふたりが主演なのでなにげなく鑑賞。意外に面白かった。

 どこからともなく漂ってきたような母と娘のふたり連れ、娘の視点から語られるナレーションとか、なんとなく『ピアノ・レッスン』を思い起こさせた。そのジェーン・カンピオンとは違うけどやはり監督は女性(しかもオーストラリア人)で、『オスカーとルシンダ』の人らしい。あれも不思議な映画だったな。
 ペテンを駆使したいんちき霊能パフォーマンスで糊口をしのぐ母娘、しかし娘には実は特殊な感応力がないわけではなかった…降霊術や心霊現象のたぐいを全く信じておらず、そのウソを暴いてやろうと考えるフーディーニ(タイトルでは奇術師となっているけど、実際はもう少し引田天功系の脱出パフォーマー)。暇さえあれば身体を鍛えて脱出術を磨くことに専念する現実主義者と見えたフーディーニだが、心の底には解けない翳りがあった。その謎めいて複雑な性格づけがガイ・ピアースがぴったりな感じ。
 もちろんゼタ=ジョーンズの衣装や、母娘が住む童話に出てくる魔女のおうちみたいな家も眼に楽しい。


 今月31日がハリー・フーディーニの命日らしい。彼にとって母親が特別に大切な存在であったのもたぶん事実なのだろう。