少年贋作家に関する夢想

 きょう11/16付けの京都新聞夕刊コラムより(署名は山中英之記者):

 京都市東山区の思文閣京都本社で先月末、珍しい屏風絵が披露された。1934年に起きた肉筆浮世絵をめぐる贋作事件「春峯庵事件」の渦中の作品の一つで、事件後に行方不明になっていた「月夜遊宴図」だ。(-略-)制作したのは矢田一家と呼ばれた工房グループ。中心になって描いていたのは16歳の少年だったため、世間の驚きは相当なものだったようだ。少年は未成年で犯意もなかったとして起訴されず、高い模写力から一転して「神童」の世評を得るが、2年後に病没している。


 浮世絵師と詩人の違いはあるけれど、夭折の天才贋作家ということで、トマス・チャタトンを連想した。

早すぎた天才―贋作詩人トマス・チャタトン伝 (新潮選書)

早すぎた天才―贋作詩人トマス・チャタトン伝 (新潮選書)


 HODGEさんのブログ記事で、ドイツの作曲家マティアス・ピンチャーのオペラ《トーマス・チャタートン》(1998年)のことが紹介されている。しかもこのオペラ、テクストは先日読んだ『十三の無気味な物語』のハンス・ヘニー・ヤーンによるものだとか。不思議なつながりよ。


 文藝春秋から邦訳が出ていたピーター・アクロイド『チャタトン偽書』は絶版のままらしい。どこかから復刊されないかな。