あなたがたのそれは感情ではないとな?

 テレビ放映。予告CMを見て「よくあるディストピアものだろうな」とは思ったものの、出演俳優があまりにも興味をそそるメンバーだったので鑑賞。ただし、ドミニク・パーセルショーン・ビーンは予想以上に早く死にました(笑)。


 第三次世界大戦を経て、人間の感情こそがあらゆる暴力や争いの原因とさとった人類は、薬物によって感情を抹消することに成功する。感情を持つことじたいが禁止され、絵画・音楽など芸術作品やゲームももちろん禁制品。毎日定められた時刻に感情を抑える薬物の摂取が義務づけられ、その薬品が「プロジアム」というどっかで聞いたような名称。
 最初は取り締まる側だった主人公がしだいに疑問を抱き、こっそりプロジアムを打つのをやめてしだいに人間らしい感情を取り戻していくと、異変を察知した同僚や上官に「お前、感情を持ってるな?」と咎められるのだが、そういう上官だって大声をはりあげて怒鳴ったり、同僚も「これで違反者たちを大虐殺だ!ははは〜」みたいに明らかに異常に昂揚した感情をあらわにする場面もあるのだが、その種の感情は指弾されないようなのだ。主人公もそこを指摘すればいいのにさ。どうやら、義憤というか正義の怒りや犯罪者に対する"処罰感情"などは正当なもので、それに対し、美に対する感動や同情や悲しみといった《女性的》な感情が、ここでいう諸悪の根源たる人間感情らしい。この矛盾に無自覚である限り戦争がなくなったりしないと思うのだが…


 どう見ても『マトリックス』もどきな、カンフーだか居合道だかを変なふうに取り入れた趣味の悪い殺陣(?)が残念&にもかかわらず真面目な顔のクリスチャン・ベールが見ていて辛いのだが、セットのデザインにはけっこう魅力的な部分があった。装飾を全く欠く、無機質で平板な灰色あるいはメタリックな居室やファシスト様式を思わせる巨大建物(ま、そのあたりはディストピア物には定番の感がありますが)。それと対照的に、反逆者たちが絵画や音楽やコレクションを楽しむために、それぞれ密かに自宅の壁の裏側なんかに設けた隠し部屋の、ちょっと昔の英国の居間みたいな雑多な品々で充たされたこぢんまりしたインテリアが、なんでもないのに懐かしくてもの悲しい。ただしレジスタンス陣のアジトや服装は手抜きな感じ(放送分でカットされてた可能性も)。

なお製作時の仮題は "Librium" であったが、同じ名称の抗不安薬を製造している製薬会社からクレームがついたため、今のタイトルに変更になっている。

リベリオン - Wikipedia