最近ずっと読んでいた伊藤計劃

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

超弦領域 年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

超弦領域 年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

 じつは、『超弦領域』所収の短篇「From the Nothing, With Love.」が一番気に入ったのでした。


 書いた人の実人生と作品をやたらと絡めて考えるのは良い読み方ではないのかもしれないが、著者が若くして重篤な病に襲われ、戦いながらこれらを書いたことは、やはり作品と無関係ではないだろう。自分の命の瀬戸際、死に向かって伸びる突端ぎりぎりのところに立って、「私」の終着点/世界の極みについて考え続けた著者の言葉は、彼が去っていったこの世界が今あるさまを、ぎらぎらするほど鮮明に見通していた。慎ましくて悲しいような透明さだけが残された。