公共機関の〈嫌われたくない症候群〉後篇 

  
 (すみませんね、長くて。)
 
…(承前)これらを通して痛感したのが、(後者は民営美術館ではあるけれど、広く一般の客を受け入れているという意味で)公共施設が、《感じよく思われたい嫌われたくないモメたくない》というイマドキの若い者みたいな病に罹っているなぁということであった。相手に守って欲しいことがあってそれをルールとしたいのなら、詳しくはっきりとコトバにして伝えるのは、守って欲しい側の仕事のはずである。しかし「いっぱいルールとか書いたりしたらー、感じ悪いと思われそうだしー」と言いつつ、一方でその“俺ルール”は守って欲しいという、厚かましい病。そして、ウェブサイトは真に利用者のためにゆき届いた内容を載せるよりも、とりあえず無難でお洒落っぽく見られたいという、時流におもねり体裁ばかりを気にした軽薄な病。

 なるほど、あちこちに注意書きを幾つも出したり、足元にビニールテープを貼り回したうえいちいち〈入らないで下さい〉などとと表示すれば、そりゃ美術館の内部は醜くなり、雰囲気は悪化するだろう。でもそれは、ルールを言い出したほうが負担すべき代価ではないか。デメリットをできる限り減らすよう工夫するのは、館側の仕事である。それを《感じ悪いことは自分の側からは言いたくない。黙っておいて、なるべく相手の側から勝手に察して動いてくれれば儲けもの》というような態度は、責任あるプロとは思えない。あの監視員のお姉さんたちもどうせ人材派遣会社に雇われて送り込まれた人々なのだろう。公共施設内の仕事はずいぶん民間委託が増えたんだろうが、自分たちが言い出したことに対する責任まで民間…じゃない客に委託かよ!?という怒りが、いまも消えない。

 
 最後につけ加えると、上の2件に共通してもう1つ感じたのは、ああいう「おそれいりますが…」には、反論というか言い返してくる客というのは想定されていないらしいということ。どちらの件も、こちらが「いや、私は困るんだけど」「それおかしいじゃないですか」と言ったとたん、語尾が消え入りそうになったり反応が固まったところをみると、「おそれいります」と言いさえすれば相手は羊の如く従順に言いなりになる、としかマニュアルには書かれていないらしいな。そんな大甘な“想定”では、私の“臨界”は防がれへんで!!
 それにしても、私はつくづく「暗黙のお約束」とか「皆さんそうしていただいてますので」とかが大嫌いな人間だなぁ、と、今回も*1長々書いてしまう自分のアクの濃さも痛感した次第です。はい。 〜終〜

*1:ずっと前に「おもたせ」について書いた時以来、という意味ww