答えはここにある

 本CDの印税収入は東北ヘルプ「仙台キリスト教連合被災支援ネットワーク」http://tohokuhelp.com支援に用いられます

 帯に↑こう記載されたチャリティCD。内容は大部分がBCJの既発録音盤からの再録だが、鈴木雅明のオルガン独奏3曲が新たに録音し追加されている。
 BCJの演奏会には何度か聴きに行ったことがあるのに、録音は買いそびれたままひとつも持ってなかった(鈴木氏のオルガンソロだけは持っている)ので、これは良い機会だと思い購入。米良美一のソロが入った曲もあるし、私にとってはお買い得だった。

 「死に瀕し不安におののく人が、切実な祈りを通して慰めと希望を見いだす姿」を繰り返し描いた音楽が、果たしてほんとうに大きな悲劇に見舞われた人を力づけることができるのか、信心に無縁の私にはなんとも想像できない。ただ、バッハが祈りの日々を通してこれらの美しい音楽を作り続けたという事実のなかに、人間の偉大な力を感じるだけである。


 オルガン・コラール《私はあなたに叫び求めます、主イエス・キリストよ》BWV639は、私にとっては映画『惑星ソラリス』に用いられていた曲として強く印象に残っている。
 あの映画のせいで余計にそう感じるのかも知れないが、この複雑な和声を背景に戸惑うような下降と上昇を歩む謎めいた旋律を聴いていると、前半はまるで問うても問うても答えることのない《神》に対する空しい問いかけのようであり、それに対して後半は、問いとは全く無関係のどこか別の場所からふいに射してくる薄明るいひとすじの光線のように聞こえる。たぶん私はこれからも《神》からの返答を聞くことはないだろう(心の底から問うことがないのだから当然だ)が、それでもある時、思いもかけない方向から何かに照らされる瞬間があるのかもしれない。私[たち]に希望が残されているとしたらそこでしかない。