終末的既視的超常世界内陶酔

みるなの木 (ハヤカワ文庫JA)

みるなの木 (ハヤカワ文庫JA)

 灰汁や百舌といった馴染みの名前(ただし同名でもそれが全て一貫したキャラクターなのかは不明)が出てくる「みるなの木」「赤腹のむし」「海月狩り」「餛飩商売」は、サバイバル色が強くてハラハラする(最後のなどは伊藤計劃の世界すら思い出させる)ものの、やっぱり何となく好き。かなりクセになってきたようだ。
 筒井康隆「佇む人」を本歌取りしたような「対岸の繁栄」は、本歌よりは救いのある結末でありながら、これを救いと思わせてしまうあの〈対岸〉のことを考えれば別の怖さがじわじわ沁みてくる作品。この一篇だけではなく、一連の武装島田倉庫系の物語をいま読むと、あの世界ではいったい何が起こってしまった後なのか? と、それが今だからなおさら気にかかる。


 お昼ご飯を食べながら読み始めたことをすぐに後悔してしまった「出歯出羽虫」。実験台に使われてひどい目にあう肥満の従業員の名前が〈津々島佑子〉というのだが、あの綺麗な津島佑子さんにはちゃんと断りを入れたのだろうか(笑)? 

 それと、更にどうでもいい感想だが、シーナワールドに頻出する奇妙な造語に目が慣れてしまって、ちょっと見かけない漢字の連なりをみるとすぐにシーナ造語かと一瞬勘違いしてしまうようになった。むむ?となった実例を挙げると、〈油母頁岩〉とか、〈赤坂榮林酸辣湯麺〉とか。