とりいそぎ、読んだ本記録

西洋中世奇譚集成 東方の驚異 (講談社学術文庫)

西洋中世奇譚集成 東方の驚異 (講談社学術文庫)

 『バウドリーノ』の元ネタチェックとして。
 奇妙な生き物の羅列よりも、水でなくて石が絶え間なく流れる河というイメージが、なぜか強い印象を残した。



 掲載されている【NHKのおもな歴史番組一覧表】によれば、1970年代の『日本史探訪』に始まって現在放映中の『歴史秘話ヒストリア』『BS歴史館』まで、13ものシリーズ(×多いものだと二百数十本の番組数となる)があるらしい。それらが視聴者の「歴史」観に与えた影響の大きさを思い、番組を通じて撒き散らされた俗説や誤りのかずかずに心を痛めた(笑)著者の、しつこくも愛に満ちたオブジェクション本。
 そう言われてみれば、どのシリーズ名にもなんとなく見覚えはあり、歴史好きでない私でも(子供のころの番組を除けば)それぞれ何本かは見たんじゃないかと思う*1。しかし〈たいていのシリーズは活字化され〉、その際に〈当初の放送にくらべて、かなり訂正が加えられている場合がある〉というのは意外だった。


 そのNHKの歴史番組のどこがどうけしからんのか、粘着気味にあげつらう前半は、やや繰り返しが多い感じでちょっと退屈だったが、後ろ1/3に収録されている“事例研究”はなかなか面白い。これらの歴史番組の中でもとくに何度もとりあげられる、いわば定番人気メニューであるらしい【川中島の戦い】【長篠の戦い】【本能寺の変】の3テーマについて、『日本史探訪』から現在までの各シリーズでいつどのように取り上げられ、また番組の主張や内容がどのように変遷し(なかっ)たかをタテ読みするというコーナーである。これは案外、ありそうで誰も思いつかなかった企画ではないかしら。そもそもこれら3つの事件(?)についてほとんど何もしらーん私は、これを読むこと自体が面白かったですし。ゲストとした出演した、専門家である歴史学者はもちろんのこと、いわば素人の小説家などでも、あまりテケトーなコメントをした人は容赦なく批判されている。(1990年に『歴史誕生』の「光秀謀反-新説・本能寺の変」という回に、朝尾直弘氏*2が出ていたというので、いったいどんなコメントをし、鈴木氏はどう批判しているのか!?と一瞬期待したけど、残念ながら朝尾先生がなにをしゃべったのかは全然判らず。やはり著者としては批判したい相手とそうでもない出演者とがあるのかな)


 NHKだってしょせんテレビ番組。毎週毎週なにかしら放送しなければならないのだから、せっせと作った番組内容が過去に同テーマで放送したものとウッカリ矛盾していたり、たまには退化あるいは劣化していてもしかたない面もあるだろう。とはいうものの、著者も言うとおり、初めからフィクションと知っているはずの大河ドラマですらつい「へぇー、清盛って…」と真に受けてしまいそうになる迂闊な私だけでなく、もうちょっと慎重な視聴者の皆さんだって、こういった「教養番組」で、しかもゲストに一応大学の先生なんかが出ていたりすれば、そこで語られているのは一応学問的にも確認された内容かなぁと思ってしまうものだろう。番組を見たことは忘れても、そこで刷り込まれたディテールはかえっていつまでも頭に残ったりしがち。こういうちょっと意地悪な検証も、「歴史」に対する見方だけでなく、「テレビ」に対する心構えを振り返るために大切なことかもしれないと思いました。

*1:そういえば十数年前のことだけど、歴史にちょっとうるさそうな同僚に当時放映されていた『堂々日本史』のことをしゃべったら、「フン、あんな番組は…」と即座に却下されたことを、この本のおかげで思い出した

*2:教わったわけではないので単なるイメージだけど、あまりテレビ番組に出そうにないイメージw