山口晃の展覧会


 五木寛之の小説『親鸞』『親鸞激動篇』の挿絵がたくさん展示されていて、その枚数とヴァラエティ、美しさにびっくり(このページだけでも、さまざまな技法・作風が取り入れられていることが見て取れると思う)。しかしこの小説、京都新聞にも連載されていたはずなのに全く記憶がない。新聞は毎朝けっこう熱心に読んでいるのに……
 新聞小説って意識しないとなかなか読まないものだとはいえ、いま朝日に連載中の筒井康隆のは欠かさず読めてるのだから、私が如何に「五木寛之」「親鸞」に関心を持たなかったかの現れと言えよう(笑&泣)。ほんとうにもったいないことをした。書籍化(『親鸞』本編のほうは文庫化もされている)されたものには果たして挿絵はどのくらい収録されているんだろう?

 山口画伯の画力、超絶的テクニックはとっくに承知のはずなのに、見る度に「はァ〜」と嘆息が噴き出しそうな作品の数々。お得意の、洛中洛外図ふうのびっしり描きこまれた大作をはじめとして、古い形のなかへさりげなくメカ的なディテールを接続する手法は、「日本画のスチーム・パンク」と呼びたい感じで、このところ読んだ小説あれこれに通ずるところがある。と同時に、うっかりするとどんな物もついメカにしてしまうという画伯の幻視力(?)と圧倒的画力から生み出されたデッサンや『五武人圖』(画像右)などを見ていると、ちょっとハンス・ベルメールの透き通った銅版画も連想してしまった。




※参考リンク→小説「親鸞」 五木寛之|BOOK倶楽部特設サイト|講談社BOOK倶楽部
※この機会を逃すともう見られるかわからないという襖絵。やはり行かねば→山口晃 平等院養林庵書院奉納襖絵 | 弐代目・青い日記帳