待望のヘンデル。昨シーズンの『ロデリンダ』は、アンドレアス・ショルが出ていたというのに、都合がつかなくて観に行けませんでした*1。きょうの『シーザー』を観て、『ロデリンダ』を逃したのがますます惜しく思われます。
リンク先でも紹介されている通り、時代も場所も「いったいナニコレ?」と言いたくなるような衣装とダンスを次々にまじえた楽しい舞台。指揮者のビケット氏もインタビューでちょこっと語っていましたが、ヘンデルのオペラはとにかくくどい(笑)。あまりに気持ちいいメロディーなので(それはそれでありがたいんだけど)サービスでもう一回…という調子で繰り返しが多くて、ややもすると退屈してしまいがち*2なのですが、視覚的な面白さがかなり救っていました。2幕冒頭で、エジプト王の家臣ニレーノが従者2人と共に踊る、エキゾチックかつゲイゲイしいダンスが特に印象に残りました*3。
かんじんの歌のほうですが、主役ジュリアス・シーザーのデイヴィッド・ダニエルズ。当たり役だということですが、いまひとつ私の好みではない歌唱でした。ちょっとヴィブラートが多めで音質がモヤッとしていて、動きの細かいところは回り切れていない感じに聞こえるのです。そのかわりレチタティーヴォはとても良かったです。
同じカウンター・テナーでも敵役トロメオ(クレオパトラの弟)を演じたクリストフ・デュモー、この人の声質・歌い方のほうがクッキリしていて、私の思うバロックらしい感じに聞こえました。歌も演技も大活躍だったのに、幕間にはさまれる出演者インタビューに、主要キャストのうちなぜかこの人だけ入ってなかったのはどういうわけでしょう。彼にもインタビューしてほしかったわ(同じ思いの人がいたのか、カーテンコールでデュモーのところだけは(映画館の)客席でも拍手している人が何人かいました)。
ヒロインのクレオパトラ(ナタリー・デセイ)も、目まぐるしく衣装と踊りを披露して変幻自在、ものすごいパワーだと思いました。でも一番魅力的だったのは、トロメオに謀殺されたポンペオの妻コルネリア役のパトリシア・バートン。美しく気品ある姿と情感あふれる歌唱で、存在感・説得力あるキャラクターを作り上げていました。
レチタティーヴォの箇所はビケットさん“弾き振り”のチェンバロが入るのですが、それも含めオーケストラもかなり本格的にバロックらしい響きで、ひじょうに心地よい4時間(!)でした。
**このMETライブビューイング、来シーズンの演目も発表されているのですが、バロック・オペラは一本も予定されていないようなのがやや残念です。