そなたはあまりにもよく夢を見すぎたれば

ラヴクラフト全集 第6巻』(創元推理文庫)やっと読了。
 
 「未知なるカダスを夢に求めて」長かったー。しんどかったけど、壮大なラヴクラフト世界を堪能しました。最後でとつぜん“ニュー・イングランド讃歌”みたいになるのには驚きましたが*1。それと、付録に地図が幾つか載っているけれど、どれもいまひとつよく解らん。私の頭では位置関係を理解するのにもう一度読み返さないといけないようですが、当分はその気力は出ません。まだ第7巻も残ってるし・・・


 読んでいる間、しきりに思い出したのは自分が子供の頃、いっしょうけんめいノートに書いていた「おはなし」のことでした。内容やレヴェルが「カダス」に似ているわけでは全然無い( ̄∀ ̄;)のですが、ラヴクラフトが自分の思い描いた世界を何とかすみずみまで言葉にして書き記そうとぎちぎちと言葉をつなげていく、切ないほどの気持ちが伝わって来るみたいで、自分が“ここに無いけどどこかに有るもの”を、目の前にとどめるために書こうとしていた時のあの感じと、それが似ている気がしたのです。諦めるなんていうことは有り得ないし必要もなく、ただ「どう書こう?どう書こう?」があるだけだった。あれはもしかしたら、幸福というものだったのか。


 訳者解説に、

ラヴクラフトは故郷プロヴィデンスにもどれた喜びを胸に本篇をひたすら書きあげたのである。

と指摘してあるのを読んで、なるほどなぁと思いました。


 さいわい私には書くべき壮大な夢想も、書くための力もなかったので、こうしてこちらの世界で生き続けています。そんな私に、ここではない世界を書きたいという願いの熱さを思い出させてくれた「カダス」は、設定とか筋にワケ解らないところがあるとしても、やはりすばらしいと思いましたっ。


 さぁ、次は『白鯨』に復帰だ。探求の旅はまたもや東海岸から始まる・・・

*1:TVドラマ『プロヴィデンス』のタイトルバック映像を思い出したりして。なぜか年中いつも燃えるような紅葉の場面。