注意書きを良く読んで読め。

殊能将之『樒/榁』(講談社ノベルス)読了。


 じつはこれを特に読みたいと思ったわけでもなく、たまたま図書館の棚で見かけて「薄っぺらいし電車の中で読むのにちょうどいいかな」と思っただけなのでした。で、あとから知ったけどどうやら読み順を誤ったらしい(泣)。『鏡の中は日曜日』を先に読まねばならないと若島正さんも書いておられます。こうなったらそれも読むか。もう手遅れだけど。
 この人の本では『美濃牛』を読んでおり、例によって内容は全然忘れていますが、文章がチャチっぽくなくて安心して読める感じでけっこう引き込まれて読んだと記憶。石動戯作のキャラクターも不思議と嫌みが無くて好感を持ちました。『樒/榁』は前半部分を突き破るように後半の石動パートが出てくる、クラインの壺を見ているような気持ちにさせる話。崇徳院の話はどこへいったんだろう・・という気もしますが、とりあえず『鏡の中は日曜日』を読まないと仕方なさそう。


 ところで、これを読み終えて帰宅、今日(3/31)の夕刊を見たら、「徐福伝説」の話題が載っていた。井上章一氏の文章で、和歌山県新宮市にある徐福をまつった阿須賀神社と、社殿の背後にある山が徐福の目指した蓬莱山であるという言い伝えを紹介して「伝説が遺跡化される」と書いてあった。まるで『樒/榁』に出てくる天狗塚をめぐるあれこれをズバリと表現しているみたいで可笑しかったです。