「高野聖」雑感。

 けっきょく、角川文庫版『高野聖』収録作(ほかに「義血侠血」「夜行巡査」「外科室」「眉かくしの霊」)の中では、やはり「高野聖」が一番面白かったのですが、気になったのがメインの語り手である旅の僧。
 はじめのほうで「わしは中年から仰向けに枕に就かぬのが癖で、寝るにもこのままではあるけれども」などとわざわざ言ってみたり、衣服を《着たまま円くなって俯向き形に腰からすっぽり(注:寝床に)入って、肩に夜具の袖を掛けると手を突いて畏まった、その様子はわれわれと反対で、顔に枕をするのである。》と思わせぶりな描写が出てきたので、てっきり「あれ以来、怖ろしうて、とうてい仰向けには寝られなくなったのじゃ・・・」的な、ぼっけえきょうてえオチが待ち受けているのかと思ったのですが肩すかし。私は安手のホラーを読み過ぎ(見過ぎ?)、それともこれまた読み落とし?

 それと、「魔性の女」と思われたかったら、さんざんあれこれした男を、飽きたら××に変身させてしまったうえに市場で売り飛ばし、その代金で好物をかっ喰らいつつ大酒、ぐらいのことはしないとやっぱりダメですよね。たかだか仔猫をどうこうじゃなくて。