E.ゴーリー編『憑かれた鏡』(河出書房新社)図書館本、ちょっと読み残してやむなく返却。
<収録作品> 空家‖A・ブラックウッド 八月の炎暑‖W・F・ハーヴィ 信号手‖C・ディケンズ 豪州からの客‖L・P・ハートリー 十三本目の木‖R・H・モールデン 大理石の躯‖E・ネズビット 判事の家‖B・ストーカー 夢の女‖W・コリンズ 古代文字の秘法‖M・R・ジェイムズ (以下の3篇が今回は読めず。さすがに「猿の手」はどこかで一度は読んでるけど) 死体泥棒‖R・L・スティーヴンスン 亡霊の影‖T・フッド 猿の手‖W・W・ジェイコブズ
ラインアップが定番すぎて、わざわざゴーリー選として出す意味があるのかといった感想もあったようなのですが、私にとっては12篇中既読は3篇だけだったし、寝付けない夜をまずまず楽しませてくれました。古くさい怪談が多く、(田舎の)古いお屋敷で怪異が・・・という私好みのモチーフも頻出。
- 「豪州からの客」二階建てバスの屋上で冷え切っている不気味な乗客とか、暖炉の前でうとうとする主人公に訪れる不吉な幻のイメージがなかなか鮮やか。
- 「十三本目の木」は、M・R・ジェイムズの流れをくむ作者らしく、思いがけず相続することになった宏壮な屋敷の庭に、深夜になると今は無いはずの水盤が現れ植木の本数もなぜか・・・というイイ感じの話。ただし古文書で因果を説明するのにこだわりすぎた感じで最後あたりはちょっとダルい。
- 本家本元(?)のM・R・ジェイムズ「古代文字の秘法」のほうが意外な味で、論文審査で落とされた恨みという動機にも引きこまれるし、路面電車の窓ガラス内部にいつのまにか刷り込まれた脅し広告というのがなんとも不思議で忘れられない印象。後半は、知らぬ間に送られてしまった秘法文字を記した紙片=「呪」をどう返すかという、要するにモタモタしたサイキックウォーズ(笑)で、少々苛つきながらもつい手に汗を握る展開で面白かったです。
ちなみに、このエドワード・ゴーリーという人の絵、筆触はわりと好きなタイプなのですが、いままで絵本を手に取ってみたことは殆どありません。(私の苦手な)"よくありがちなブラック・ユーモア"が漂っている作品だったら厭だなという気がして。今回の怪談集の挿絵は、驚くようなものは一枚も無いけれど、小説の雰囲気にはちょうど似合っていたと思います。