女には向かない作戦

 急死した副大統領の後継として有力候補に挙げられたハンソン上院議員ジョアン・アレン)。同じく有力候補でありながら不幸な偶発事のため指名を見送られた大物知事(ウィリアム・ピーターセン)を推す声も強く、ハンソンに対して性的スキャンダルを持ち出した追い落とし作戦が始まる。


 決して100%清廉潔白なわけではない、しかし法的には非難されるいわれのない人物が要職に就こうとする時、個人的な(ただし「顔にバンソーコー」ほど些末でもない)問題に関する追及にどこまで答える必要があるのか?しかも、その追及は「当該人物が女性だから」こそなされているかもしれない場合は?・・という微妙な点に迫った、なかなかリアルな話。
 ジョアン・アレンの知的で沈着、芝居がかってない人物像がかっこいい。「父親が大物」という設定もむしろ自然な感じ。“実在の女性大統領候補”ははるかにアクの強そうな人物なので、いよいよ決戦が近づいた時にはどれほど叩かれるのか(既に十分叩かれてると思うけど更に)と思うと、その大変さが思いやられる。映画では、「違法ではないが道義的に責任がある、に過ぎない」問題について、冷徹で割り切った判断がされるところに合衆国らしさを感じる。日本ではこうは行かないかもしれない。


 ヒロインを追及する側の急先鋒を憎々しく演じたゲイリー・オールドマンは、相変わらず「誰ですかアンタ」なカメレオンぶり、ハゲ頭はともかく老眼鏡(?)が渋い。役割的には助演格だと思うんだけど、executive producerに名を連ねているせいか、クレジットでは彼の名前が一番に出てきます。間食好きの大統領(ジェフ・ブリッジス)のキャラクターもまずまず好い感じ、ラストの感動的な大演説にはちょっと鼻白みましたが・・。


 W.ピーターセンは『CSI』のグリッソム役で私は大好きなんだけど、ここでは敵役でちょっと残念。風貌としては大統領役でも似合いそうな感じなので、次の機会にはぜひ(笑)。