どこで乗り間違えたのか

 ビデオ・DVD商品が見つからない。原作本がこちら→Un soir, un train: Amazon.fr: Johan Daisne: Livres

 放映時のデータではフランス映画となっていたが、舞台はベルギー(のフラマン語地域?)。監督もベルギー人、しかも名前が“デルヴォー”でタイトルが“深夜列車”とくると、どうしてもポール・デルヴォーの、夜の駅待合室や列車を背景にした幻想的な絵を思い出さずにはいられない*1。この映画も幻想的ではあるけれど、あのポール・デルヴォーの、夢の時間が月光に照らされてずーっと止まったままのような甘美な絵とは違って、こちらは最初から苦い悔恨を含んで始まり、奇妙な焦燥に追い立てられたすえに悲劇的な目覚めで終わる。

 主人公マティアス(イヴ・モンタン)はベルギーの言語学教授で、衣装デザインを手がけるフランス人のアンナと恋人だが結婚はしていない。二人がそれぞれ脚本と衣装を手がけた舞台の稽古が進行中だが、彼らの意見は一致せず、二人の間には冷たいムードが漂っている。そしてそれは必ずしも仕事のせいだけではないようだ。アンナは言葉の通じない異国で孤独感に苦しんでいる*2。しかしマティアスは彼女に手を差しのべないまま、講演旅行のため夜行列車に乗って出発する。その列車が彼を思いがけない場所へ連れて行ってしまう……。私たちの言葉は本当にどうしても通じ合わなかったのだろうか?物語のあと、主人公はたぶんそんなふうに自問し続けるだろう。


 このデルヴォー監督は、マルグリット・ユルスナールの『黒の過程』の映画化をした人らしい。ユルスナール自身も脚本を気に入っていたと、邦訳の後書きに書いてあったので、この映画も観てみたい。


 ところで、この映画で検索して見つかったブログ記事、全然べつの映画について書いておられるんですが、おもしろーい。
『変態村』 すきなものだけでいいです
変態村 - 一人でお茶を
 そういえば、『イヴ・モンタンの深夜列車』の謎のホテル?の場面など、なんとなく『ウィッカーマン』を思い出した*3のですが、ここで紹介されてる『変態村』も『ウィッカーマン』の匂いがしますね。

*1:映画には黒ずくめの教授も出てくる!

*2:かつて英国を一緒に旅行したことがあったが、アンナは英語を解さないためすっかり気分を害してしまったことも回想される

*3:というかそもそも『ウィッカーマン』と同じテープに録画していた。wowowでヘンテコ映画特集として続けて放送したんだったかしら(^^;)。