トンデモとの微妙な境目

保阪正康『昭和史七つの謎』  読了。

 図書館で借りた元版(単行本)なので、昨日メモした原武史氏との対談は残念ながら収録されていない。

 
 以前ときどき見かけた(いや、最近でも相変わらず囁かれているらしいが)「M資金」というものの起源というか謂れを初めて詳しく知ったナリ。
 「徳川埋蔵金」の類いというか、ちょっとトンデモな話と思っていたが、まったく根拠の無い話とも言い切れないみたい。
 今で言う「マルチ商法」「ネットワークビジネス」と同じようなトークで広まっていったようだ。実際に流布していった儲け話そのものは荒唐無稽な作り話としても、戦後のドサクサにまぎれてじょうずに私腹を肥やした人たちが多く存在したことは事実で、“今度こそ自分がオイシイ思いをしたい!!”という心理がこの種の噂を育て広めたという指摘には説得力がある。
 
 その他、多少聞き知ってはいたものの、シベリアに抑留された日本人の多くが(サバイバルの必要に迫られてではあるが)ソ連に叩き込まれた社会主義思想に染まり同胞をも抑圧する状況を生み出していった恐ろしさ、東京裁判で陸軍関係者ばかり死刑判決を受けたある種の理不尽さなど、辛い事実を改めて知らされた。