みすぼらしい未来映画

 映画の製作年度は新しいけど、原作はAldous Huxleyオルダス・ハクスレーが1931年に発表した『すばらしい新世界』。オープニング・タイトルにレトロ・フューチャーな味わいを感じたので、期待しつつつ見守っていたのですが、中身に入っていくと、だんだん『1984』と『時計仕掛けのオレンジ』がちょっとずつ配合された凡庸な近未来モノぽくなってきてがっかり。後で判ったのですがTVムービーらしいので、ちゃちな感じがするのも仕方ないのかも。


 上から順にアルファ/ベータ/ガンマ/デルタの4階層に分断された社会という設定なのですが、2&3番目の階層の特徴が判りにくく、せっかくの設定がムダになっている感じでした。
 アルファの人たちが"HelloHowareyouI'mfineThankyouverymuch."とひと息に挨拶するのが吉本新喜劇みたいで可笑しかったのですが、そういう仕掛けがもっとあれば面白かったのに。家族制度の否定やフリーセックスやドラッグ以外に、彼らの社会を特徴づける奇異な習慣を巧く印象づけられなかったのが、物足りなさの一因でしょう。シェイクスピアが、微かに残った文明の痕跡、象徴にされているのも古臭くて「どこかで見た」感が否めません。おそらく原作のほうは、古臭くはあってももっと凝った設定で面白いのでしょうけど。


 原作が有名なので、これ以前に1980年にも映像化されたことがあるらしい。こちらもTVムービーなれど、時間が180分とほぼ2倍なので、もう少し丁寧なお話になっているだろうし、古い映像化作品のほうがかえって面白いかもしれないと思いました。新しく映像化する以上、なにかヒネリがないとつらいですね。