ぐらぐら煮えたぎる鍋の上で

NHK-BS2 (9/19〜21放送)

 《アメリカ、イエローストン国立公園の地中深く活動を続けている巨大なマグマ溜まりが、もし超巨大噴火 Super Eruptionを起こしたら・・・》というあり得なくはない事態を描いたもの。ドラマ2時間+ドキュメンタリー1時間の番組であるが、ドラマの方もドキュメンタリーの中で解説されている事実や専門家の知見に基づいて、かなり忠実に作られているので、重複する部分が多い。というか同じCG映像の使い回しも(--;)
 地球全体で見ると、超巨大噴火はおよそ5万年毎に発生。最後のそれはインドネシアで7万4千年前に起こり、当時の人類は滅亡の危機にさらされた。もしイエローストンで"超巨大噴火"が起きれば、その威力は毎秒1000個の広島型原爆が爆発するのに相当し、しかも(ドラマでは)噴火は一週間近く続いた。1000km圏内では90%の住民が死亡すると試算されている。


 この番組では、凄まじい噴火と降灰・それが引き起こす多大な被害と社会の大混乱を表現するために、(過去に他の火山が噴火した際の)実際の映像とCGを組み合わせてリアリティを持たせようとしてあった。が、やはり実際の地形や火山の特徴、周辺地域の人口や生活の様態によって、結果も大きく違ってくるだろうし、実際こんな大噴火が起きればいったいどういう結果を生じるのか、具体的に思い描くことはとてもできそうにない。また、火山活動を常に監視し、「可能性」があることは予測できても、実際に噴火が起きてみるまではどのくらいの規模になるのか見当を付けることは困難。ドラマの中でも、パニックを恐れるあまり強い避難勧告を出さなかったことが結局災いする。高性能な観測機器やコンピュータによる分析をいくらしてみたところで、「サバイバルの実務」には繋がらないことの怖さも感じた。
 手の施しようのない現実をつきつけられて言葉を失うFEMAや州の幹部たち。また、イエローストンに近い周辺諸州では、避難民があふれ交通が麻痺し、商店が掠奪される・・・という描写も、短いながらあった。まるで先日のハリケーンカトリーナの被害を予見していたよう。しかし、カトリーナの被害はもちろん甚大ではあったが、このドラマが扱っている巨大災害よりは遙かに限定された地域で起きた。それでも満足な対処はできなかったことを考えると、ドラマが描き出して見せた被害状況は中途はんぱで甘いものに思えた。
 地球上の大部分が、降り積もる灰と二酸化硫黄を含む有毒ガスによって「核の冬」ならぬ長期にわたる「火山の冬」を迎えることになる。つまるところ、もしイエローストンで"超巨大噴火"がいったん起きてしまえば、もうこの文明世界はひとまずお終い! なので、たとえば核兵器廃絶のためになされている努力も、まるでムダなような感覚に陥ってしまう。もちろんイエローストンが噴火するより前に人類が滅亡してしまう可能性もけっこう高そうだけど・・・


 イエローストンは過去に60〜70万年ごとに大噴火を繰り返していて、最後に噴火したのが約64万年前だから《予定日は過ぎている》のだそうだ。その日は明日来るかもしれないし、数十万年後かもしれない。また、それほど大規模でない噴火で済む可能性ももちろんある。そういう地球にみんなで生きている。はー。

(追記:上記BBCのサイトが充実してますので、正確な内容はそちらをぜひご参考に。)

(2013/12/11追記:BBC News - Yellowstone supervolcano 'even more colossal' http://bbc.in/JcIogt