けっこう人が死んでるのに感じの良いホラー

 年末年始がバタバタしていたので、やっと今ごろお正月休み気分です。気楽に観られて、しかもコックリした作品を・・・というので選んだのが

 これももちろん長年放置してあった録り溜めビデオ。オカルトホラー系でしかもジョニー・デップ、私としては当然いそいそと観るべきものではあったんですが、ちょっとだけ気になったのが原作者。
 この映画の原作は『呪いのデュマ倶楽部』という題で邦訳も出ていて、作者はアルトゥーロ・ペレス・レベルテといいます。私は同じ作者の『フランドルの呪画(のろいえ)』という小説を読みかけて、その趣味の悪さに途中で嫌気がさしてしまった*1ことがあり、なんとなくひっかかりを感じて、『ナインスゲート』も今まで先延ばしになっていたわけです。


 でもそんなことは全くいらぬ心配でした。原作はいざしらず、映画のほうはなかなか悠然とエレガントな感触。主人公が謎の書物を求めてめぐるヨーロッパ各地の風景や、古書がいっぱい詰まった部屋などの映像が美しく、なかでも落魄したファルガスの屋敷のたたずまい、家財を売り払って空っぽになった部屋の床にじかに古書が並べてあるところなどは、ヨーロッパ映画らしい感じですてきでした。


 ストーリーの突っ込みどころ数々は、このさい不問。ただ、かんじんの探求される書物の意匠が、いまひとつショボイというか地味だった(もっとネクロノミコーン!なおどろおどろしさを期待してた私がお子ちゃまですか)のと、私が割と好きなレナ・オリンが意外にあっさりした役目だったのが少し残念。

*1:やたら思わせぶりで気取った登場人物や会話に、「なにこれ?こんなんがシャレてると思ってんの?」とブチ切れ。ケチな私が自腹で買った本を途中で投げ出すことは滅多にないことである。いくぶんかは翻訳のせいだったのかもしれないが・・・