転職していく女サイコ

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 リストラ断行中の小さな雑誌社。陰気なハイミスの校正係であるヒロインも、在宅パート勤務に格下げされてしまう。憎たらしい上司が偶然起きた感電事故であっさり死んでしまうのを目撃した彼女は、それ以来次々と同僚たちを殺害しては、自宅(車椅子生活の老母と二人暮らし)の地下室を死体で飾りつけた恐怖の殿堂に作りかえてしまう。
 ただし彼女が殺人に取りつかれてしまう本当のきっかけらしきものは、じつは物語の始まるはるか以前に家庭の中で起こっていた*1ことが断片的な回想シーンで説明される。そして彼女の職場と家族との意外なつながりも含めて、全てを消し去ったあと、髪の色もメイクも変えてまるで別人に成りおおせた彼女が、新しい職場を求め(新聞の求人欄に赤マル付けて)自動車で走り去るところで映画は終わる。

 シンディ・シャーマンってずいぶん昔はやったアーティストというイメージだったのだけど、わりと同時代の人だったんだ‥映画に出てくるオフィスは何となく70年代ふうに古びた感じだし、そこで働く女性たちのファッションもいくぶんレトロで、シンディ・シャーマンの造り出す典型的な女性像に通じるものがある。その中でキモくてブスな主人公だけがとても異質(であり且つ個人的にはどうにも親近感を禁じ得ない)なのだが、殺人を重ねるたびにしだいに生き生きと変身していく様子は怖&笑。チープな色遣いや光と影の面白さを楽しむ映画かもしれない。

*1:ここはちょっと予定調和ぽくて不満