志村ふくみ展に欲求不満

 小規模な常設展示ではあるが、いちおう志村ふくみ作品のほうが目当て。でも作品に添えられた解説が貧弱で少し物足りなかった。あれでは、単に「源氏物語のヒロインたちのイメージで染織しました」という情緒的な話に終わってしまいそう。たとえば企画展のほうのムナーリ作品だったら、添えられた札に「油彩・紙」とかいちいち表示してありますよね。あるいは、絵本や玩具にトレーシングペーパーなど透ける素材を使うことで、次々に絵が重なっていく面白さを出していることの指摘とか。それと同じように、染めに用いられた植物名をせめて代表的なものだけでも書き添えるとか、織りの技法についても少しは紹介して欲しい。
 「蛍」と名付けられた一点は、ゆかたでときどき見かける「紅梅」という織り地(太さの違う糸が規則的に織り込まれて小さな格子状に見える)のように見えたのだけど実際そうなのか、もしそうだとしたら先染めで、「紅梅」という地模様を出しつつ、それとは別のリズムで絣柄も織り出すということ(まさにポリリズム)ができるのか/してあるのかということなど知りたかったんだけど、まさかあそこに交代で座っている監視員のお姉さんがたが答えてくれるとも思えなかったしね…上記リンク先に画像が出ている「夕顔」も、裾の辺りの模様はどうやって織りだしてあるのか興味深かったのだけど、ガラス越しではいまひとつこまかく観察できず。ま、なにせ小規模な常設展示だし、あんなもんでしょうかね。
 ムナーリ展のほうは、作家本人のアイデアとセンスはもちろんのこと、60〜70年代イタリア出版界の洗練されたかっこ良さが響いてくる内容だった。