名無きもの

 いきなり、姓の正しい読み方が不明、という事実から始まるドキュメンタリー映画。晩年は何人かの人に助けられていたにもかかわらず、名前すら正確には残らなかった。出口のない吹き出物みたいに異様なテンションが溜まり続けた生涯、およびその部屋の、圧倒的な厚みとあっけない消滅。彼は全てを自分と共に持ち去っていってしまった。