よほどこわいめに遭ったのか

北極星号の船長 <ドイル傑作集2>』 (創元推理文庫) 読了。

 M.R.ジェイムズ風?のオカルト骨董怪談「革の漏斗」や、イングランド/スコットランドの境に住む平凡な夫妻が、ローマ人の砦の史蹟(ちょうどサトクリフの物語の舞台みたいな)を見学に出かけて過去の戦いを幻視してしまう「ヴェールの向こう」などが好み。とくに[革の漏斗]という、この漢字の並びを見ただけで何かしらないけど「おねがいだからやめてー」といいたくなる怖さが迫ってくる。「ヴェールの向こう」も、ただそれだけの話なんだけど、淡々としていながら"取り返しつかない感"に充ちた結末がしんみり怖い。
 「樽工場の怪」も、題名とアフリカ植民地(?)のけだるい雰囲気にそそられる。オチはけっこう脱力なのだが、それが出現する場面は強烈なイメージを残した。

 霊媒や催眠術を扱った諸作はドイルっぽい素材と思って期待したけど、それほど面白くなかった。とくに超能力で男を操るおそろしい女たちが登場する最後の2作←ドイルの女性像は極端(笑)と思った。