「はぐる」続報

 「はぐる」の件につきまして、またひとつ使用例を見つけたので、追加メモ:

 パリの一住民の日記を読みながら、時折、わたしの心をかすめる不安がある。象徴の世界構造を映しているにしては、其れにしてはあまりにも無表情の記述の調子が、わたしを傷つけるのだ。紙をはぐった瞬間に、ふいに落ちこむ思いにとらわれることがある。なんというか、世界の無意味さのなかに。 
            堀越孝一『中世の秋の画家たち』(講談社学術文庫)p.32

 「紙を」とあるのは、古い史料なので現在の書籍のように綴じたものとは違っていて、「ページ」とは呼びにくい形だからかもしれない。あるいは、「世界」と対比させるためにあえて「紙」と呼んでいる? ちなみに堀越孝一氏は東京都出身。(もっと淡々とした画家評伝集かと思ったら、けっこうこんな調子で続くので、読むのが難しい。)